湯煙揺れる札幌の奥座敷へ!定山渓スイーツ最前線の美味を巡る
定山渓 スイーツの熱気が、かつてない高まりを見せている。札幌の中心部から南へ車を走らせること約1時間。支笏洞爺国立公園の険しくも美しい渓谷美に包まれたこの温泉地で、いま起きているのは単なる「湯上がりの甘味」という枠組みを軽やかに超え出た、本格的な味覚の刷新劇だ。
かつて温泉街の定番といえば、湯気の立つ蒸籠から配られる素朴な温泉まんじゅうだった。だが現在の情景はまったく異なる。伝統の味を守り抜く老舗が暖簾を守る一方で、気鋭のパティシエや料理人たちが仕掛ける定山渓 スイーツの数々が、感度の高い旅人の足を次々と止めている。渓谷のせせらぎを眼下に望みながら極上のデザートに舌鼓を打つ――そんな贅沢な体験を求めて、平日の午前中からカフェの前に静かな列が生まれる光景も珍しくなくなった。
温泉街の常識を塗り替える仕掛け人「第一寶亭留」の美学
この地に吹き荒れるスイーツ旋風の震源地を辿ると、必ず行き当たる存在がある。定山渓で複数の個性派旅館を展開する株式会社第一寶亭留だ。彼らが手がけた店舗は、単なる宿泊客向けのラウンジではない。温泉街全体の回遊性を高め、地域そのものを一つの広大なリゾートに見立てる「街巡り」のハブとして機能している。
札幌市南区の豊かな自然環境と、北海道が誇るフレッシュな乳製品や果実。それらを妥協のないクラフトマンシップで昇華させたプロダクトは、従来の温泉街グルメが抱えがちだった「観光地価格で味はそこそこ」というステレオタイプを粉々に打ち砕いた。今や同社がプロデュースするスイーツスポットは、製菓・飲食産業の専門家からも熱い視線を注がれるイノベーションの現場となっている。
五感で味わう!「坂ノ上の最中」と「雨ノ日と雪ノ日」の衝撃
第一寶亭留が送り出した代表格のひとつが、「坂ノ上の最中」だ。温泉街の坂道にひっそりと佇むこの店が提案するのは、伝統的な和菓子とフランス菓子の華麗なマリアージュ。「MONAKA」と名付けられたその一品は、サクサクとした香ばしい最中種の上に、滑らかなムースや濃厚なフィナンシェ、季節のコンフィチュールが幾重にも重なる芸術品だ。一口かじれば、食感のコントラストと洋酒や果実の芳醇な香りが口いっぱいに広がる。
一方、温泉街の少し奥まった静寂の中に佇む「雨ノ日と雪ノ日」は、天候すらも味方につけるユニークなコンセプトで知られる。美瑛や遠軽など、道内各地の厳選された生乳を使用したジェラートは、驚くほどキレが良く後味が澄み渡る。雨や雪が降る悪天候の日に訪れると、ジェラートのトッピングが増量されたりホットドリンクのサービスが受けられたりする心憎い演出も。天候を理由に旅を諦めさせない仕掛けが、訪れる者の心を温める。
足湯とパンの幸福な出会い「エクスクラメーションベーカリー」
木々の緑が映える庭園に突如現れる、洗練されたウッドデッキと小さな足湯。そこが連日大盛況を見せる「エクスクラメーションベーカリー」だ。店内に並ぶのは、惣菜系から甘美なデニッシュまで、職人が粉からこだわり抜いたパンの数々である。
とりわけInstagramをはじめとするSNSで爆発的な拡散を見せているのが、九角形の独特なフォルムを持つクロワッサンや、季節のフルーツと特製クリームを惜しげもなく詰め込んだスイーツ系ブレッドだ。温泉の恵みである足湯に浸かりながら、焼き立ての香ばしい生地を頬張り、自家焙煎コーヒーをすする。ここでしか味わえない体験価値の高さこそが、現代の旅人を惹きつけてやまない理由だ。
世界的巨匠・辻口博啓の思想に通じる「テロワールと素材主義」
現代の日本のパティスリー界において、辻口博啓シェフをはじめとするトップランナーたちが提唱し続けてきたのは「地域の風土(テロワール)と素材への敬意」だ。その思想の波は、定山渓の地にも深く浸透している。
北海道の冷涼な気候が育む濃厚なミルク、近隣の果樹園で採れるリンゴやベリー、そしてミネラルを豊富に含んだ水。これらの一級品が、職人の手によってモダンなご当地スイーツへと生まれ変わる。単に甘くて見栄えが良いだけではない。その土地の土と水と空気が生み出したストーリーを一皿の上に凝縮する試みは、もはや地方都市のスイーツという枠を超え、ガストロノミーの領域へと足を踏み入れている。
徹底解剖!隠れ家カフェから限定パフェ・老舗まんじゅうまで味わい尽くす混雑回避の攻略法
定山渓のスイーツシーンを余すところなく堪能するためには、戦略的なアプローチが欠かせない。週末のピークタイムには主要なカフェで行列が発生し、人気の限定商品は昼過ぎに完売してしまうことも日常茶飯事だからだ。
まず押さえるべきは、朝一番の行動設計である。「坂ノ上の最中」や「エクスクラメーションベーカリー」を狙うなら、オープン直後の午前中が最大のゴールデンタイム。早い時間帯であれば、ショーケースに全種類のフレーバーが美しく揃い、落ち着いた空間でじっくりと選ぶことができる。
そして午後のティータイムには、渓谷沿いの隠れ家カフェで提供される「知られざる新作パフェ」に照準を合わせたい。地元の旬のフルーツを贅沢に使った層構造のパフェは、数量限定で提供されることが多いため、事前に食べログの口コミやじゃらんnetの周辺観光情報をチェックし、提供時間や予約可否を把握しておくのがスマートだ。
もちろん、定山渓温泉の原点である「温泉まんじゅう」の老舗も外せない。創業から変わらぬ製法で毎朝蒸し上げられる出来立てのまんじゅうは、皮のしっとり感と上品な餡の甘みが格別。お土産用としてはもちろん、湯巡りの合間に店頭でほかほかのひとつを頬張るのが通の楽しみ方だ。混雑のピークとなる14時から16時をあえて外し、午前中や夕暮れ時の静かな温泉街を散策しながら巡るのが、至高の味をストレスなく味わうための鉄則である。
一般社団法人定山渓観光協会が描く、スイーツが拓く通年観光の未来
かつて定山渓温泉の観光需要は、秋の紅葉シーズンや冬の雪景色といった特定の季節に集中する傾向があった。しかし、一般社団法人定山渓観光協会をはじめとする地域のステークホルダーは、四季を通じて楽しめる「食とスイーツの魅力」を観光の柱として強力に発信し始めている。
新緑の春には爽やかなシトラスやハーブを使ったタルト、夏には清涼感あふれるジェラートや冷製ジュレ、秋には地元産ナッツや栗の濃厚スイーツ、そして白銀の冬には温泉熱を利用した温かいデザート。季節ごとに表情を変えるメニュー展開は、一度訪れた旅行者に「次は別の季節に来てみたい」と思わせる強い動機を生み出している。
温泉に入って身体を癒やし、美しい渓谷を眺めながら極上の甘味に酔いしれる。札幌の奥座敷・定山渓はいま、日常の喧騒を離れて真の豊かさを取り戻すための「甘美なサンクチュアリ」として、確かな進化を続けている。 (出典: 定山渓 スイーツ(Yahoo!ニュース))